2017.05.8 up
2017.05.8 up
日程 | 2017.06.21(水) |
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タイトル | ベター・ハーフ |
収録曲 | 1.たとえばぼくが死んだら(森田童子) |
品番 | TECI-1546 |
価格 | ¥1,852+税(税込¥2,000) |
購入 | Amazon
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発売・販売元 | (株)テイチクエンタテインメント |
本作は鴻上尚史の作・演出による四人芝居「ベター・ハーフ」で、中村 中本人が歌う劇中歌を収録したミニ・アルバムだ。ベター・ハーフとは、身も心もぴたりと相性が合うパートナーのこと。天国でひとつだった魂が、現世に生れる時に男性と女性に分けられて別々に生まれてくる。舞台はその自分の“かたわれ”のことを求めて試行錯誤する四人の男女の恋愛模様を綴った内容で、中村 中はホテルのラウンジでピアノの弾き語りを仕事にしているトランスジェンダーの女性を演じており、本作の楽曲も舞台上で中村が実際にピアノを弾きながら歌っている。
この舞台の初演は2015年。4月から5月にかけて東京と大阪で上演され、当日券もキャンセル待ちで入場できない者が出るほどの盛り上がりとなり、それを受けて2017年に東京、大阪、名古屋、福岡で行われる再演に伴ってこのCDもリリースの運びとなったものだ。
70年代半ばから80年代前半にかけて活動し、カルト的な存在となった女性シンガー・ソングライターである森田童子が、1980年に発表した四枚目のオリジナル・アルバム『ラスト・ワルツ』で発表した楽曲。活動停止後の1993年に映画「高校教師」の主題歌として使用され、シングル・カットされるという異例の扱いを受けている。
原曲はアコースティック・ギターを軸にストリングスなどが重なるフォーキーなサウンドだが、本作では真壁陽平のギターのシューゲイザー的なアプローチにより、荘厳なロック・ナンバーへと変貌している。
中村 中にとっては「夜会」などでも深い因縁のある中島みゆきが、映画『奇跡の山 さよなら、名犬平治』の主題歌として書き下ろした1992年のシングルで、同年のアルバム『EAST ASIA』にも収録されている。
パートナーの存在の大切さを綴った歌詞は、まさに舞台「ベター・ハーフ」のテーマをストレートに訴える内容で、中村 中の歌声も、どこか中島みゆきの力強さが憑依したかのようにドラマチックだ。
中村 中が2014年に発表したアルバム『世界のみかた』に収録したオリジナルで、音源もその時のもの。初めてセルフ・プロデュースで臨んだアルバムのラストを締める重要な楽曲である。
シンガー・ソングライターの橘いずみ(現在は榊いずみ)が、1993年にリリースしたセカンド・アルバム『どんなに打ちのめされても』の収録曲。起伏の激しいドラマチックなラヴ・ソングだが、テクノロジーを駆使したレディオヘッド以降のコンテンポラリーなアプローチは、プロデューサーである根岸孝旨の面目躍如たるものがある。
ベルギーの歌手、アダモが60年代に放った世界的なヒット曲。日本のシャンソンの女王の異名で呼ばれた越路吹雪は、1964年に岩谷時子による日本語詞でシングル・リリースした後、生涯の代表曲として歌い続けた。他にもRCサクセションをはじめ、多くのアーティストがカヴァーしている名曲だが、本作は越路吹雪の歌う日本語ヴァージョンをもとにカヴァーしている。
このように本作は多くの歴史的な名曲を収めた作品だ。楽曲ごとの声色やヴォーカル・スタイルの選択からは、原曲への敬意を表明しつつ、心身を最大限に駆使して自らの歌へ昇華する中村 中のヴォーカリストとしてのキャパシティの大きさが伝わってくる。
サウンド面ではカヴァー曲でプロデュースを担当している根岸孝旨とのチームワークでの、コンテンポラリーな刺激に満ちたアプローチが印象的で、これは今後の彼女自身の音楽制作のポイントとなるに違いない。
それに加えて中村 中本人のオリジナル「愛されたい」が入っていても、なんの違和感もないことにも驚かされる。本人にしてみれば、デビュー前にストリートで演奏していた頃から、スタンダードとオリジナルを交えて披露するのは自然なことなのかもしれないが、これはシンガー・ソングライターである彼女自身の卓越した作詞作曲能力の証でもあるだろう。